界面活性剤がお肌に与える影響とは?
界面活性剤と聞くと、なんとなく肌に悪そうというイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。界面活性剤にはさまざまな種類があり、すべてが悪いと一概にいえません。その中から自分に合ったものを選ぶことが大切です。
今回は、そもそも界面活性剤はどのような働きをするのか、使用するメリットやデメリット、どんなものを選んだらいいのかなど、気になるポイントを解説します。
界面活性剤とは?
界面活性剤とは、2つの物質の境目に作用して、その性質を変えるものの総称です。例えば、水の入ったコップに油を注ぐとどうなるかを想像してみてください。水と油は比重が違うので、かき回すと一時的に混ざりますが、時間が経つと油が上で水が下というように分離してしまいます。
液体と液体、液体と固体、固体と固体、固体と液体、気体と液体、というように物質と物質が接する境目のことを「界面」と呼びます。この境目には表面をできるだけ小さくしようとする界面張力が働きます。界面張力が同じような大きさの液体の場合は、混ざりやすい性質があります。水と油が混ざらないのは、その力に差があるからです。
界面活性剤は、1つの分子の中に水となじみやすい部分(親水基)と油となじみやすい部分(親油基、疎水基)の両方を併せ持つのが特徴です。界面張力を弱める作用があり、水と油のように本来混じり合わないものをなじみやすくする働きがあります。
身近な例を挙げると、酢と油でドレッシングを作ってもすぐに2層になりますが、ここに卵を加えるとマヨネーズになります。これは卵黄に含まれるレシチンが界面活性剤の役割を果たすからです。
界面活性剤は石けんや洗剤のほか、化粧品や医薬品、食品など幅広く使用されています。つまり、私たちの身の回りにある多くのものは界面活性剤の働きに支えられているのです。
界面活性剤の種類
界面活性剤は、大きく4つに分類されます。
陰イオン・アニオン型
水に溶けたときに親水基がマイナスの電気を持つものです。多くの種類が開発され、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型などがあります。
アニオン型界面活性剤は、洗浄力や気泡性に優れているのが特徴です。水と皮脂やメイクといった油性の汚れをなじませて浮かし、落としやすくします。
石けんをはじめ、台所用洗剤、衣料用洗剤やシャンプー、ボディソープなど、ほとんどの洗浄剤に使用されています。
陽イオン・カチオン型
水に溶けたときに親水基がプラスの電気を持つものです。石けんとはイオン的に逆の構造を持つことから、逆石けんとも呼ばれています。
繊維や毛髪などのマイナスに帯電しているものの表面に吸着し、帯電防止、柔軟効果、殺菌作用などを示すのが特徴です。
こうした性質から、コンディショナーやトリートメント、繊維の柔軟剤、殺菌剤などに幅広く使用されています。
両性イオン・アンホ型
同じ分子内にプラスとマイナスの両方の電気を持つものです。水に溶けたときに酸性の場合はカチオン型界面活性剤の、アルカリ性ではアニオン型界面活性剤の性質を示します。
他のイオン型界面活性剤に比べて皮膚への刺激が少なく、洗い上がりがマイルドなのが特徴です。また、他の活性剤と組み合わせることで、洗浄力や気泡力を向上させる作用もあります。
洗浄・乳化補助剤として、高級シャンプー・コンディショナー、ベビー用のシャンプーなどに使用されています。
非イオン・ノニオン型
水に溶けたときに、イオン化しない親水基を持つ界面活性剤です。分子の結合の仕方によって、エステル型、エーテル型、エステル・エーテル型などに分類されます。電離しないため水の硬度や酸やアルカリの影響を受けにくく、他のあらゆる界面活性剤と併用可能です。
乳化作用に優れ、親水性と疎水性のバランスを容易に調整できるのが特徴です。使い勝手の良さから、現在ではアニオン型と並ぶ主力界面活性剤となっています。
水分と油分を混ざりやすくして、安定性を高める働きがあるため、化粧品の乳化剤、可溶化剤、増粘剤として幅広く使用されています。
界面活性剤のメリット・デメリット
界面活性剤のメリットとデメリットについてみていきましょう。
界面活性剤のメリット
前述したとおり、界面活性剤には水と油をなじませる働きがあります。化粧品には水性のものと油性のものが含まれているため、そのままでは肌への効果を発揮できません。
化粧品に界面活性剤を加えることで、大きく2つのメリットが期待できます。
1つ目は、化粧品の成分を均等に混ぜ合わせて安定性を高めることです。
水性と油性の材料を混ぜ合わせて乳液やリキッドファンデーションを作れるのも、さまざまな成分が混在している化粧水を外見上、無色透明にできるのも、界面活性剤の恩恵なのです。
2つ目のメリットは、皮脂やメイク汚れを落としやすくすること。
クレンジング剤に含まれる界面活性剤が油と水を混ぜ合わせるからこそ、油性の汚れを水で洗い流せます。また、泡立ちをよくする作用もあるので、泡の力で汚れを落とす効果が期待できるでしょう。
肌にメイクや皮脂汚れが残ったままだと、肌トラブルを招く可能性があります。毎日の汚れをきれいに汚し、肌を清潔に保つためにも、界面活性剤は必要不可欠な成分です。
界面活性剤のデメリット
界面活性剤は化粧品の機能を高める重要な役割を担っています。しかし、人によっては肌へ悪影響を与える可能性も考えられるでしょう。
界面活性剤は洗浄力を高める働きがあるものの、必要なうるおいまで奪ってしまい、肌を守るために備わっているバリア機能を損ないやすいのがデメリットです。
ただし、すべての界面活性剤が悪いわけではありません。化粧品に配合されている界面活性剤は、石油系のものと天然系のものに大別されます。このうち、問題視されているのは石油系の材料で人工的に作られた合成界面活性剤です。
石油系界面活性剤は原価が安く、大量生産に向いているため、ドラッグストアなどで低価格で販売されている化粧品によく使われています。洗浄力が強すぎて皮膚のバリア機能を壊すリスクがあります。
また、皮膚への浸透性が高く、有害な物質が肌の中まで入り込み、乾燥やシミ、ニキビなどの肌トラブルの原因になる可能性があります。
界面活性剤との上手な付き合い方
化粧品を選ぶときは、界面活性剤が使われているかどうかよりも、界面活性剤の種類を確認することが大切です。
もし今使っている化粧品が合わないのであれば、界面活性剤に着目してみるのも一つの手です。そうすれば自分にぴったり合うスキンケアアイテムを見つけられるかもしれません。
界面活性剤にはたくさんの種類がある中で、できるだけ避けたいのが石油系の合成界面活性剤です。商品表示をチェックして「合成界面活性剤フリー」などと記載されたものを選びましょう。
汚れを落とす洗顔料には石けんタイプとフォームタイプの2種類がありますが、フォームタイプは合成の界面活性剤が使用されており、洗浄力が高い反面、肌に負担がかかります。肌への影響を考えると天然の界面活性剤である石けんがおすすめです。
石けんは水ですすぐと界面活性作用が分解される性質があるため、大切な肌のバリア機能を損なわずに健やかな状態を保つことができます。
ただ、石けんといっても製造方法によって洗浄力に違いがあるので、自分の肌に適したものを選びましょう。洗顔する際は、時間をかけずに手早く洗い、肌に界面活性剤が残らないようにすることが重要です。
まとめ
界面活性剤は悪者扱いされがちですが、すべてが肌に悪いわけではありません。界面活性剤には、混ざり合わないものを混ぜる、安定性を高めるといった作用があり、むしろ化粧品には欠かせない成分です。
一口に界面活性剤といっても、さまざまな種類があります。それぞれの特徴をよく理解して、自分の肌質に合うものを選びましょう。