- 1980年に当時の厚生省(現・厚生労働省)によって「表示指定成分制度」に該当するとされたこと
- 1990年代に欧米諸国で、パラベンに内分泌かく乱物質(環境ホルモン)の懸念があるとされたこと
敏感肌のクレンジングにはパラベンフリーを選ぶべき?
目次
パラベンフリーに関わらず自分の肌に合う成分なのかを見極めることが大切です
スキンケアの基本はクレンジングだといわれます。
メイク落としや洗顔をきちんと行うことは肌荒れの予防につながりますから、敏感肌の方なら、少しでも肌に負担のかからないクレンジングを選びたいと思うものですよね。
そこで気になるのが「パラベンフリー」という触れ込みのクレンジング製品です。
これだけ見ると、「パラベンは肌に悪い」だから「入れていない製品なら安心」と感じます。
ですが、パラベンを使わない商品なら本当に肌に安心なのでしょうか?
「パラベンフリー=安全」は作られた神話のようなもの
クレンジングに限らず、最近のスキンケア製品でよく見かける「パラベンフリー」「パラベン不使用」というキャッチフレーズ。
でも、肝心のパラベンがどんなものかご存じの方は意外と少ないようです。
パラベンとは、クレンジングをはじめさまざまな化粧品や食品、医薬品に使われているポピュラーな「防腐剤」の一種です。
雑菌などの繁殖や活動を抑えて腐敗を防ぐ効果があります。
このパラベン、実は一概に「悪者」とは言い切れない面があるのです。
クレンジングに防腐剤が必要なワケ
そもそも、どうして化粧品に防腐剤が使われているのでしょう?
それは化粧品が腐るからです。
化粧品の中にはアミノ酸、糖類、天然油脂などといった、カビや微生物のエサとなる成分が多く使用されています。
しかも食品と比べて使用期間が長く、蓋の開け閉めなどの際に手指に直接触れやすいため、雑菌が混入する可能性がとても高いのです。
もし防腐剤が入っていなければ、空気中の黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌といった細菌が中に入って成分は酸化し、さらに細菌は繁殖します。
カビが生えたり変質してしまったりした化粧品を肌につければ、かぶれやかゆみ、ニキビなどの肌トラブルを引き起こしかねません。
こうしたことから日本の薬事法では「化粧品は未開封の状態で3年間は品質が変わってはいけない」と決められており、防腐剤は必須とされています。
パラベンはもっとも普遍的な防腐剤
分かりやすく「パラベン」と略されますが、正式には「パラオキシ安息香酸エステル」という名称です。
抗菌活性の強い順にベンジルバラベン→ブチルバラベン→プロピルバラベン→エチルバラベン→メチルバラベン
という5種類があり、日常で使う化粧品類に使用されるのは、主に毒性が低く、皮膚刺激も少ない、安定したメチルバラベンです。
防腐剤としてのパラベンの歴史は長く、1924年に医薬品の防腐剤として使用され、1977年にはFDA(食品医薬品局)から食品への添加も認可されています。
防腐剤といっても、フェノキシエタノール、ヒノキチオール、安息香酸などさまざまな種類があります。
その中でパラベンが最も使われているのは、約1世紀という長い年月使われた実績があることや、他の防腐剤と比べて安価で、しかも安全性が高いとされているためです。
さらにパラベンには、黄色ブドウ球菌・表皮ブドウ球菌・大腸菌・肺炎桿菌・チフス菌・腸内細菌・緑膿菌・白癬菌など、広範囲の菌やカビの繁殖を抑える効果があります。
つまり防腐剤の中でも特に使い勝手のよい優等生といえます。
肌によくないとされたパラベンの実際
ほぼ1世紀近くの間使用され、安全性や防腐効果も評価されてきたパラベンですが、ある時期から「パラベンには毒性がある」「肌に悪い」と、危険視する意見が出回り始めました。
その背景には
があります。
「表示指定成分」とは、「体質によってごくまれにアレルギー等の肌トラブルを起こす恐れのある成分」として容器やパッケージに表示するよう定めた113種類の化粧品成分です。
確かに40年前には化粧品の安全性に関する意識が古く、パラベンも単独で使用するとアレルギーを起こす可能性がありました。
現在では研究が進み、品質が向上し、さらに他成分と併用することでパラベン濃度を下げ、安全に使用できる技術が確立しています。
また、環境ホルモンとは、代謝や成長、生殖などに必要なホルモンの働きを狂わせてしまう物質のこと。
いささか怖いイメージがありますが、実は大豆イソフラボンやその他の防腐剤も環境ホルモンに類していて、その毒性は明らかになっていません。
ことさらパラベンだけを怖がる話ではないようです。
なぜパラベンは悪者になった?
もちろん、どんな成分であっても万人に安全、というものはありません。
ですが、パラベンはあくまでも「ごくまれにアレルギー等の肌トラブルを起こす可能性のある成分」です。
そして日本では化粧品におけるパラベン類の配合量を、全体の1%以内と定めているのに対し、ほとんどの化粧品には0.2~0.3%程度しか含まれていません。
上限の1/3程度ですから、本来なら大きな問題になる成分ではないのです。
にもかかわらず、いまだにパラベン=体に悪いというイメージがあります。
パラベンに十分な安全性が確認されて以降も「表示指定成分=危険」という誤解だけが残ってしまったためです。
その結果、市場にはパラベンを配合していない「パラベンフリー」や「ノンパラベン」を謳う商品が続々と登場しました。
「○○無添加」が求められる時代
最近はパラベンに限らず「〇〇を使っていません」という商品を数多く見かけるようになりました。
「アルコールフリー」「グリセリンフリー」「ノンシリコン」「ミネラルオイル無添加」などなど…。
「○○は体に悪い」「〇〇フリーだから安全」というキャッチコピーは、消費者に分かりやすく商品イメージを与えられるために、よく使われるのです。
しかし、長い年月をかけて使用効果や安全性を研究開発された成分が、そうそう深刻な健康被害を及ぼすはずはないのです。
そもそも本当に体に害があったのなら厚労省が許可を出し続けることは実際ないのです。
無添加=安全というイメージにとらわれると、本来は必要な成分を排除することになりまねません。
そして注意しなくてはならないのは、「〇〇フリー」と書いてあれば本当に安全なのか、ということです。
パラベンフリーの落とし穴
もちろん添加物は、必要がなければないに越したことはありません。
それでも入っているのには、必要である理由が存在するからです。
日本では「薬事法」において、「製造又は輸入後、適切な保存条件のもとで3年を超えて性状及び品質が安定なものでなければならず、3年以内に変質する恐れのあるものは使用期限を表示しなければならない」と定められています。
つまりパラベンが肌に悪いかもしれないからと、パラベンをなくすことはできても、化粧品には、防腐剤が必要なのです。
「パラベンフリー」を謳っている製品の場合、アルコール(エタノール)など殺菌作用がある他の成分が防腐剤として配合されているケースがほとんどです。
その成分が原因で肌トラブルを引き起こしてしまう可能性を忘れてはいけません。
「パラベンフリー=防腐剤フリー」というわけではないのです。
パラベンフリーには2種類ある
さて、パラベンに限らずすべての防腐剤を使用していないという「防腐剤フリー」商品には2通りのケースがあります。
ひとつは本当に防腐剤を一切使っていないケース。
無菌充填した1回使い切りの商品などがあたります。
1回きりで使い捨てる分には、雑菌が混入することも変質することもありませんから、防腐剤は必要ありません。
問題はパラベンの代わりに防腐効果がある他の成分を使っているケースです。
防腐剤をまったく入れていない場合、パッケージやボトルに「開封後冷蔵庫で保存し、1週間以内に使い切る」など、使用期限があるはずです。
期限が書いていないのに防腐剤フリーとされている場合は、防腐剤ではないが抗菌作用のある保湿剤などで代用している場合がほとんどです。
添加物を使わないことを謳い文句にしている「無添加化粧品」が3年間も品質が保たれるには、それだけ強力な化学物質が多く含まれているということです。
使いきりもしくは腐らないもの
防腐剤を一切使わなくて大丈夫な化粧品としては
- 無菌充填した使い切りのもの
- 水分を含まない粉末タイプ
- 腐らない成分の化粧品
が挙げられます。
たとえば製造過程で高圧高温殺菌し、無菌状態にして充填したもの。
1回ごとの使い切りの形でパッケージしたものであれば、雑菌も混入せず、防腐剤を使う必要はありません。
ですが化粧品の多くは、熱に弱く、無菌充填には向かないため、こうした製品は多くありません。
次に水を含まない化粧品。
化粧品が「腐る」のは、主成分に水分が含まれるためです。
水分が少ないドライフルーツが長期間保存できるのと同じで、水分を使用しない粉末や油の状態の化粧品も、防腐剤は不要です。
クレンジングでいうと、パウダー状の洗顔パウダーがこれにあたります。
そして腐敗しない成分でできた化粧品。
これは敏感肌用、アトピー用製品に多い、合成ポリマーが主成分のものです。
ただ、合成ポリマーは強力な化学物質のため、肌に塗ると、肌を健康に保つ常在菌を保つことができません。
ひどい敏感肌やアトピー性皮膚炎の人以外にはあまりおすすめできません。
パラベンの代替品にひそむ危険性
ではどういった成分が、パラベンの替わりに防腐剤として使われているのでしょう。
代表的なものが
- フェノキシエタノール
- BG
- エタノール
などです。
フェノキシエタノール
一般には保湿成分として使われており、パラベンの殺菌効果を補助する役割があります。
殺菌力がパラベンの3分の1程度と弱いため、フェノキシエタノール単体で使う場合は3倍の量を入れる必要があります。
BG (ブチレングリコール)
雑菌の増殖を抑えるという役割を持ち、これも保湿成分として多くの化粧品に配合されています。
BG単体で防腐効果を出すためには10%以上の配合量が必要となります。
エタノール(エチルアルコール)
消毒液に使われている、殺菌・抗菌作用を持つ成分です。
蒸発しやすい成分なので、防腐剤として配合されている場合、皮脂を過剰に奪う恐れがあります。
これら代替成分の一番の問題点は、十分な防腐力を得るためにはたくさんの量を配合しなければならないこと。
少量で防腐効果を持つパラベンを配合したものより、肌への刺激が強くなる可能性があるのです。
パラベンフリーのメリットとデメリット
では「パラベンフリー」と書かれたものは肌に悪いのか?というと、もちろんそんなことはありません。
人によっては、弱いメチルパラベンでも肌に刺激となる可能性もあるので、敏感肌の人やパラベンアレルギーのある人は、パラベンフリーの化粧品を使うほうがよいのも確かです。
パラベンフリーのメリット
- パラベンによる肌への刺激がない
- パラベンアレルギーの心配がない
- パラベンは危険というイメージを持つ人にとって心理的な安心感がある
パラベンフリーのデメリット
- パラベン以外の代替防腐成分で刺激を感じる場合がある
- パラベンフリーにこだわると、選べる化粧品の数が少なくなる
- 安価なパラベンに対し、代替の防腐剤を配合すると価格が高くなってしまう
ポイントは、必ずしも「パラベンフリーが絶対よいわけではない」こと。
同様に、「パラベンが入っているから安心」というわけでもありません。
肌がどの成分を刺激として反応するかは、人それぞれです。
結局はいろいろな種類を試して自分の肌に合うものを選ぶしかありません。
肌に優しいクレンジング選びのポイント
肌荒れが起きる主な原因は、「肌のバリア機能の低下」にあります。
紫外線や空気の乾燥などから角質層を守る皮脂膜のバリアは、日常のスキンケアによって守る必要があります。
そしてスキンケアの基本がクレンジング。
保湿と同じくらい大切なのが、その前にする「落とすケア」なのです。
しかし、なかなか自分の肌に合うクレンジングが見つからない方も多いでしょう。
理由はいろいろありますが、やはりクレンジングに含まれる成分に大きな原因があります。
ただ、やみくもにパラベンだけを避ければよいと考えるのは危険です。
これまで説明したように、クレンジングに含まれる成分の中には、パラベンよりも気をつけるべき成分があるためです。
クレンジング選びのポイントは、
- 肌への刺激が強い成分を避ける
- 肌の状態に応じてクレンジングのタイプを使い分ける
この2つを意識しましょう。
クレンジングが肌にダメージを与える理由
大きく一般的に「クレンジング」といえば
- 化粧汚れを落とす「メイク落とし」
- 皮脂汚れを落とす「洗顔」
の2つです。
スキンケアの手順の中でも、この2つは肌にかかる負担がとても大きい工程です。
肌にダメージを与える原因は、主に摩擦による刺激と界面活性剤による刺激。
これは、最近のメイク用品の発達と関係しています。
最近は、「朝塗れば夜まで落ちない」「コーヒーカップにつきにくい」など落ちにくいメイク用品の需要が多くなりました。
皮脂や汗で落ちにくくするために、シリコン樹脂や合成ポリマーといった成分を使う製品が増えたのです。
必然的に、こうした落ちにくいメイクを落とせるだけの強い洗浄力を持つクレンジングが必要になったのです。
しかし、強い洗浄力を持つ界面活性剤は肌に必要な皮脂までも洗い流してしまい、結果として、肌のバリアが弱り、肌の乾燥や皮膚炎などの原因となってしまいます。
また、落ちにくいメイクを落とすため、ゴシゴシと強くこすりすぎてしまうことも肌にダメージを与える原因になっています。
クレンジングに含まれる肌刺激の強い成分
石油系合成界面活性剤
クレンジングに含まれる成分の中で、特に注意してほしいのが合成界面活性剤です。
メイク汚れと皮脂汚れ、どちらも油性ですから、クレンジングには油汚れを落としやすい界面活性剤が含まれています。
しかし、界面活性剤の中でも「石油系合成界面活性剤」は洗浄力が強すぎて、肌のバリア機能や常在菌まできれいに洗い流してしまいます。
ミネラルオイル(鉱物油)
鉱物系のオイルは、原油から石油を精製する過程で不要となった油分を精製したものです。
安価で酸化しにくく、より効果的にメイクを浮かせるためによく使用される成分です。
ただ脱脂力が高く、クレンジングに含まれている場合は乾燥肌を悪化させる可能性があります。
その他
合成ポリマー(シリコン)、エタノールなども、肌への刺激が大きい成分です。
せっかく丁寧にクレンジングをしても、そのクレンジングに含まれる成分が肌に悪ければ意味がありません。
できれば避けるか、含まれていても量が少ないものを選ぶとよいでしょう。
ただ、これらの成分が必ずしも肌に悪いということではありません。
たとえば洗浄力が強すぎれば肌の負担になりますが、弱すぎれば汚れを落としきれず、ニキビなど別の肌トラブルの原因になる場合があります。
また、皮膚科などで処方されるワセリンも実は鉱物油の一種です。
鉱物油といっても不純物が少ない種類なら、安全性は高いのです。
大切なのはその成分が自分の肌に合うかどうか。
クレンジングを選ぶときは、まずは成分表をしっかりと確認しましょう。
商品パッケージに記載されている「成分表」は、先に表示されるほど配合量が多いものなので、上位に記載される成分に注目すればその成分の強さが見きわめられます。
そして、肌荒れがひどいと感じるときは面倒でもパッチテストを行ってから使いましょう。
安全性の高い成分でも季節や個人差でアレルギー反応がでてしまう場合もあります。
パッチテストの方法
①皮膚が柔らかい二の腕の内側に3ヶ所、100円玉大に塗る
②1~2分してから洗い流す
③3~4日間様子を見て肌に問題がなければ顔に使用可
クレンジングのタイプ別メリット・デメリットまとめ
敏感肌におすすめのクレンジング
一般的に、洗浄力の強い順にクレンジングを並べると
ミルクタイプ > クリームタイプ > ジェル・バームタイプ > オイルタイプ > シートタイプ
右へ行くほど洗浄力が強く、肌への刺激も大きくなるため、敏感肌の人には左半分がおすすめです。
ミルクタイプ
水分が多めに配合され、界面活性剤の量が少ない分だけ肌への負担が軽く、敏感肌にはおすすめです。
洗浄力は低く、軽いメイク向きです。
クリームタイプ
油分が多く含まれて洗浄力がありつつ、余分な皮脂までは洗い流さずに仕上がるので、敏感肌や乾燥肌におすすめです。
適度に硬さのあるテクスチャが肌のこすりすぎを防ぎます。
ジェルタイプ
弾力性のあるジェルは、肌との摩擦が少なくなり、中でも乳白色をした乳化ジェルは油分を適度に含んでメイクになじみやすく、肌への負担は比較的少なめ。
バームタイプ
オイルとクリームの中間で、手に取ると体温で溶けるタイプです。
オイル分でしっかりメイクを落とせる一方で摩擦がおこりにくく、肌への刺激も穏やかです。
肌に負担をかけないクレンジング5つのポイント
敏感肌の人がクレンジングで最も気をつけるべき点は、肌にストレスを加えないことです。
その1. 部位によって使い分ける
・マスカラや口紅などのポイントメイクは専用のクレンジングやオイルタイプ
・顔全体は洗浄力のマイルドなクリームタイプ
・粉をつける程度の軽いメイクの日ならジェルやミルク
など、使い分けで肌の負担を軽減できます。
その2. 絶対にこすらない
クレンジングは肌になじませるだけで十分です。
Tゾーン→Uゾーン→目元や口元の順で、指の腹で円を描くようになじませます。
その3. 40秒以内で終わらせる
メイク落としの主成分である油分も界面活性剤も、敏感肌には刺激になります。
クレンジングが肌についてから「40秒以内」に落とすことを意識しましょう。
多少ぬるついても次の洗顔で落ちるので気にせずに
その4. 洗顔はぬるま湯で
水ではなく32~36℃のぬるま湯で、やさしく流すのが理想です。
その5. 一刻も早く化粧水をつける
洗顔後は肌から水分が蒸発するのと同時に、角質層の水分が奪われてしまいます。
乾燥が進行し、肌荒れの原因になるので、素早く基礎化粧品をつけて保湿しましょう。
まとめ
敏感肌のクレンジングにはパラベンフリーを選ぶべきでしょうか?
「パラベンフリー」を謳った製品が絶対よいわけではありません。
同時に、「パラベンが入っているから安心」というわけでもありません。
敏感肌の人はクレンジングを選ぶ際、成分表を確認するだけでなく、パッチテストをして自分の肌に合うかを見極めることが大切です。